剣に生き、鬼と化す──土に生き、土に死す──。第37巻は、対照的な二つの生き様が交わる巻だ。一世限りの孤独な鍛錬を、この世の剣に注ぎ込む武蔵。同じ孤独な研鑽を、後の世へ残る土の実りへと託す秀作。剣の道と農の道、決して理解し合えぬはずの二人の生き様が、か弱き稲一本の命を介して、やがて静かに交叉していく。武蔵はこの村での日々を通して、斬ることの外にある「実らせる」強さの手応えを、確かに心に刻んでいく。予期せぬ実りが、彼の内側にも芽吹き始める深化の一巻。